妊娠期と出産準備
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赤ちゃんとの最初の1週間は期待もいっぱいですが、初めての授乳は少し不安もあるかもしれません。スムーズな授乳のスタートには、事前に授乳に関するアドバイスをお読みください。
産後1時間以内に授乳を試してみることが最適です。リズミカルにくわえて吸いつくことで、赤ちゃんが乳房細胞のスイッチを入れ、母乳が出始めます。1「マジックアワー」と言われる特別な時間です。
「赤ちゃんが生まれたらすぐに、おっぱいに届くように赤ちゃんを胸元に置くことが理想的です。赤ちゃんは飲むかもしれませんし、飲まないかもしれません。いずれにせよ、飲む機会を与えることが大切です。」と国際的に有名なラクテーション・コンサルタントであるCathy Garbinが言っています。
「赤ちゃんの身体を支え、赤ちゃんがおっぱいを見つけて、自力でくっつくようにさせてください(「ブレスト・クロール」と呼ばれるこの動きは、オンラインで動画を見ることができます)。しかし、赤ちゃんがおっぱいをくわえられない場合、医療従事者がポジショニングをサポートします。授乳を始める時には、お母さまが半分リクライニングの状態で赤ちゃんにまかせた状態でくっつく授乳姿勢が良いです。」
この特別な最初の授乳が終わったら、体重測定をして服を着せましょう。リラックスして抱き寄せ、赤ちゃんとのスキンシップを楽しんでください。これにより「愛情ホルモン」であるオキシトシンがお母さまと赤ちゃんから分泌されます。これは最初の母乳である初乳を出すのに不可欠なものです。3
「息子が健康であることを確認すると、助産師さんは私と夫と赤ちゃんだけの家族の時間をくれました。それはなんと言ったらいいか分からないほど感動的で、本当に至福でした。そして、その特別な時間に赤ちゃんは2回おっぱいを飲みました。」とイギリスの2児の母、Ellieは思い出して言います。
おっぱいを飲むことで、お母さまの産後の回復を赤ちゃんが手伝っていることをご存知でしたか? これは、オキシトシンが子宮を収縮させるためです。産後の1時間、このホルモンは自然と胎盤を押し出して出血量を減らす手伝いをします。4
帝王切開をしたり、または他の合併症があったりする場合でも、赤ちゃんと肌を触れ合わせる時間を持ち、最初の数時間に授乳することはできます。
「赤ちゃんを抱っこできない場合はパートナーが代わりに肌と肌を触れ合わせることが大切です。こうすることで、お母さまの準備ができるまで、赤ちゃんは安全であること、愛されていること、そしてぬくもりを感じることができます。」とCathyは言います。
赤ちゃんが直接おっぱいを飲めない場合は、できるようになるまで、早いうちに頻繁にさく乳を始めると良いです。「できるだけ早く直接授乳することでお母さまと赤ちゃんは良いスタートを切ることができますが、必須ではありません。」とCathyは言っています。「それよりも大切なことは、あとで必要になった場合に授乳ができるよう、母乳を出す準備をしておくことです。」
最初の頃は母乳が出始めるように、手でさく乳したり、病院のさく乳器を使ったりすることができます。5お母さまが集めた貴重な初乳は、その後赤ちゃんに与えることができます。母乳には非常に多くの素晴らしい健康面でのメリットがあるため、赤ちゃんが早産児もしくは健康が優れない場合、特に大切です。
赤ちゃんが早産児または医学的合併症があり、最初の授乳を止められている場合でも、母乳育児は可能です。「早産または他の障害のために、最初の6週間まったくおっぱいから直接飲むことがなかったけれど、成長してうまく飲むようになった赤ちゃんを本当にたくさん見てきました。」とCathyは言います。
赤ちゃんのくわえ方はどれくらい母乳をうまく飲めるか 、その結果どのように成長・発達するかということに影響するため、きちんとラッチオンすることは、母乳育児の良いスタートを切る上で非常に重要なことです。6 うまくラッチオンできないと乳首の痛みや傷の原因になるため、ラッチオンがうまいとすでに言われていて、大きな問題はないと思っている場合でも、特にまだ出産した施設にいる間は、ためらわずに医療従事者におっぱいのふくませ方を確認してもらってください。
「病院で授乳するときはいつも、助産師を呼んでふくませ方を確認してもらっていました。」とオーストラリアの2児の母、Emmaは言っています。「正しく授乳ができていると思っていましたが、痛かったときもあったので、助産師さんに相談し、赤ちゃんを離してきちんとくわえられるようサポートしてくれました。その結果、家では自信を持つことができました。」
赤ちゃんがラッチオンするとき、乳首を赤ちゃんの口蓋に向けてください。そうすることで、赤ちゃんが乳首とその下にある乳輪に吸いつきます。これは、赤ちゃんが乳首と乳房組織の両方を口の中に入れてうまくおっぱいを飲めることを意味しています。6
「ラッチオンは大変気持ち良く感じ、痛いというよりも引っ張られている感覚に近いです。」とCathyは言います。赤ちゃんは口を大きく開きます。下唇は外側に突き出されているかもしれませんが、上唇はおっぱいの上に気持ちよく乗っかります。赤ちゃんはボディランゲージで心地よいことを表現します。この時期の母乳量は多くないため、赤ちゃんがたくさん吸って何回も授乳していたとしても、飲み込むことはあまり多くありません。」
1週目の授乳の頻度や時間には大きな差があります。「最初の24時間は、赤ちゃんによってまったく異なります。誕生はとても疲れることなので、長時間眠る赤ちゃんもいますし、頻繁におっぱいを飲む赤ちゃんもいます。」とCathyは言います。「この個人差が、新米のお母さまを最も困惑させることのひとつです。みんなが様々なアドバイスをするため、お母さまも赤ちゃんも一人ひとり違うということを覚えておくことが大切です。
「初乳は成乳よりも濃く、少量しかでませんが、栄養が詰め込まれています。初乳を飲むことで、赤ちゃんは大量の母乳が出始める前に、吸うこと、飲み込むこと、呼吸することを練習できます。」とCathyは説明します。
およそ2日目~4日目(出産当日を含む)の母乳が出始めるときまでに、赤ちゃんは夜中も含めて24時間に8~12回はおっぱいを飲みます(もっと多いときもあります)。7効率的に飲むのに必要な筋肉と動きはまだ発達中のため、このような初期の授乳にかかる時間は、10~15分ないし45分~1時間の間になります。
「最初はとてもきつく、たいていは想像しているよりもきついです。そしてこれが新米のお母さまの多くにショックを与えます。」とCathyは言います。「トイレに行ったり、シャワーを浴びたり、食べ物を少し取ったりすることも自由にできません。驚くのは普通のことです。」
オーストラリアの1児の母、Camillaは、次のような体験をしました。「1週目、Frankieは昼も夜も2時間おきに、1回に30分から1時間かけておっぱいを飲みました。」とCamillaは言います。「パートナーと私は2人とも、ずっと疲労困憊でした。」
幸いなことに、この頻繁な授乳により母乳の供給が始まり安定します。7ですから、赤ちゃんにおっぱいを与えるほど、母乳の量が増えていくことになります。そのため、新生児の授乳スケジュールについては、授乳の機会を減らす可能性があるため、気にする必要はありません。赤ちゃんが次のような空腹のサインを見せたら、授乳に集中してください。8
泣くのはおなかがすいた時の最後のサインですので、その前にそうかもしれないと感じたら、おっぱいをあげてください。一旦泣き始めると、特にお母さまも赤ちゃんもまだ授乳のやり方について学び始めたばかりで、赤ちゃんに授乳することが難しくなります。赤ちゃんが大きくなると、飲む時間は短くなり、頻度も減るため、授乳をしやすく感じるようになります。
授乳は痛いものではないと言われたことがあるかもしれませんが、実際のところは、多くのお母さまが最初の数日は大変だなと感じています。お母さまの乳首に赤ちゃんが強く頻繁に吸いつくことに慣れていないためで、これは驚くことではありません。
「最初の数日は、お母さまの身体と赤ちゃんが授乳に慣れるまで、大変だなと感じる可能性があります。赤ちゃんがおっぱいの上にずっといて、上手にくわえられていない場合、その感触はかたい新品の靴を履いているときに似ています。」とCathyは言います。「足を傷つけることがあるように、乳首を傷つけることもあります。怪我は治療するよりも予防が大切です。最初の数日が過ぎてもまだ痛みが続くようであれば、ラクテーション・コンサルタントまたは母乳育児の専門家にご相談ください。」
カナダの1児の母、Mariahは、次のように同意しています。「息子のラッチオンは良いように見えたけれど、授乳中に傷つけるので、すべてが痛かったです。舌小帯短縮症が原因であることが判明し、診断と矯正のために市民病院の授乳クリニックから素晴らしいサポートを受けました。」
最初の数日に授乳をした後に、特に初めての赤ちゃんではない場合、生理のような痛み(後陣痛という)を感じることもあるかもしれません。これは、子宮が通常のサイズに戻り始めるため、子宮収縮を促進するオキシトシンが授乳によって分泌されることが原因です。4
母乳が出始めると、通常はおっぱいが張り、固くなり、以前よりも確かに大きくなっていると感じます。中にはおっぱいが非常に膨れて固くなり、触ると痛みを感じるお母さまもいます。こうした状態を乳房緊満といいます。10赤ちゃんに頻繁に授乳することで張りを和らげることができます。セルフケアの方法についての詳細は、おっぱいの張りとは何ですか?をお読みください。
入ったものは必ず出てきます。初乳は、胎便と呼ばれる最初のうんちを促す下剤のような役割をします。タールのように黒くてべとべとしているので、少し驚くかもしれません。11ただし、心配なさらないでください。赤ちゃんのおむつはいつもこうではありません。母乳を飲んでいる赤ちゃんのうんちは通常いやな匂いはなく、かすかに甘い匂いがします。
これは、想定されるおむつが汚れる回数と時間、そして内容物の見え方です。
出産当日
2日目(出産当日を含む)
3日目(出産当日を含む)
4日目(出産当日を含む)~1か月
おしっこは、淡い黄色です。平均的な新生児は毎日1回おしっこをし、およそ3日目になると毎日約3枚のおむつを濡らし、5日目からは毎日5枚以上のおむつを濡らします。最初の数日はおむつが重くなっているかということにも注意する必要があります。11
最初は少量の母乳しか出ないため、新生児を満足させられているか心配になるかもしれません。しかし、求められるままに与えているのであれば、赤ちゃんに必要な量を出していることになります。記録をつけたい場合は、上記のとおり、汚れたおむつと濡れたおむつの数をチェックしてください。このパターンからずれている場合は、医療機関を受診してください。
「最初の3~4週間は、ほとんどの赤ちゃんがおっぱいを飲んで眠るだけです。赤ちゃんが落ち着かずに常におっぱいを欲しがるようであれば、医療従事者に診てもらうことを検討してください。」とCathyは言います。
赤ちゃんは授乳後にミルク色のものを吐くかもしれませんが、心配する必要はありません。しかし、吐しゃ物にオレンジ色、赤色、緑色、茶色、または黒色のものがあるとき、または噴射するように吐くときは、医療機関を受診してください。高熱がある、うんちに血が混じっている、大泉門(頭の柔らかい部分)がへこんでいる、または2週目までに出生時体重に戻らないなどの場合も、同様に医療機関を受診してください。11
しかし、赤ちゃんがこのようなサインを出さずに、成長目標に到達しているようであれば、十分な母乳を摂取していることになります。お母さまと赤ちゃんはすぐに授乳に慣れ、より規則的なパターンに落ち着くでしょう。
母乳育児カレンダーの次のステップについてはこちら。1か月目の授乳: よくあること
1 Pang WW, Hartmann PE. Initiation of human lactation: secretory differentiation and secretory activation. J Mammary Gland Biol Neoplasia. 2007;12(4):211-221.
2 Shashi R et al. Postpartum psychiatric disorders: Early diagnosis and management. Indian J Psychiatry. 2015; 57(Suppl 2):S216–S221.
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5 Meier PP et al. Which breast pump for which mother: an evidence-based approach to individualizing breast pump technology. J Perinatol. 2016;36(7):493.
6 Cadwell K. Latching‐On and Suckling of the Healthy Term Neonate: Breastfeeding Assessment. J Midwifery & Women’s Health. 2007;52(6):638-642.
7 Kent JC et al. Principles for maintaining or increasing breast milk production. J Obstet, Gynecol, & Neonatal Nurs. 2012;41(1):114-121.
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9 Jacobs A et al. S3-guidelines for the treatment of inflammatory breast disease during the lactation period. Geburtshilfe Frauenheilkd. 2013;73(12):1202-1208.
10 Lawrence RA, Lawrence RM. Breastfeeding: A guide for the medical profession; 2011. 1114 p.
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