母乳育児のメリット
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母乳が赤ちゃんにとって最適な食べ物であることはご存知だと思いますが、授乳期のお母さま自身の栄養についてはどうでしょうか? 授乳中の食べ物について、栄養士に詳しく話を聞きました
授乳中は特別な食事は必要ありませんが、お母さまが食べるものは栄養バランスがとれていなければなりません。これはたくさんの果物と野菜だけでなく、オート麦、玄米、および「全粒穀物」、「全粒粉」または「全麦」とラベルされたシリアルやパンなどを意味します。こうした食べ物もジャガイモ、パスタ、クスクスと同じようにデンプンを多く含んでおり、重要なエネルギー源です。
またお母さまは、脂肪分の少ないタンパク質(優れた摂取源として鶏肉、卵、豆類、レンズマメ、魚、牛の赤身肉等があります)、オリーブ油、ナッツ、シード、アボカド、およびサケやサバなどの脂肪分の多い魚に含まれる健康的な脂肪も必要です。脂肪分の多い魚はお母さまの健康と赤ちゃんの発達に良い食材ですが、汚染物質を含んでいる可能性があるため、一週間に2人前(約140g(5オンス))以上の青魚(または1人前以上のメカジキ、サメ、カジキ)を食べるべきではありません1。
ビタミンDは重要です。これはお母さまと赤ちゃんの両方にとって健康な骨のために必要不可欠であり、そのほとんどを日光に当たることで取っています。たくさんの日光が当たらない場所にお住まいの場合、特に冬の間は、お母さまの身体は十分なビタミンDを作ることが難しいため、サプリメントが推奨されます2 。病院スタッフにアドバイスを受けてください。
授乳中はカルシウムも使い切ってしまうため、十分な量を摂取するようにしてください3。ミルク、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、またはナッツ、豆腐、ゴマ、緑の葉物野菜などの乳製品以外のカルシウム源から、一日4人前の摂取を目指します。摂取量は1/2カップの生野菜または50g(1.5オンス)のチーズです。
幸いなことに、脂肪分の多い魚を食べる量を制限する以外は、授乳中に控えるべき食べ物は特にありません。カフェインとアルコールも賢明な範囲であれば大丈夫です。この点についての詳細なアドバイスは以下をお読みください。
また、お母さま自身がピーナッツアレルギーでない限りは、授乳中にピーナッツベースの食べ物を控える理由はありません。実際に最新の研究では、お母さまが授乳中にピーナッツを食べ、1年目に乳児の食事に加える場合、赤ちゃんがピーナッツに対して敏感になる可能性は低いということが示唆されています4。
母乳育児のお母さまは、母乳育児ではないお母さまよりも一日あたり約500kcal多く必要としますが5、お母さまは一人ひとり違い、必要なエネルギー量も授乳期間中に変化します。お母さまが必要とするカロリー量は、赤ちゃんの年齢、大きさ、食欲だけでなく、お母さま自身の身体のBMI(ボディマス指数)、お母さまがどのくらい活動的か、また赤ちゃんが完全母乳かどうか、または双子や多胎児へ授乳しているかなどの要素に左右されます。
授乳中に体重を大幅に落とそうとするのは良くありません。お母さまは、お母さまと赤ちゃんに必要な栄養素を確実に摂取する必要があります。妊娠期についた脂肪は母乳を作るのに使用されるため、母乳育児は増えた分の体重を減らすのを助けます。
体重が一週間に約1kg(2.2ポンド)以上増えている、または減っている場合は、健康的でバランスのとれた食事がとれているかご自身で確認し、必要な場合は調整し、さらにアドバイスが欲しい場合は担当の医療従事者にご相談ください。
お母さま自身の食事よりも赤ちゃんへの授乳に集中したくなりますが、単にビスケットやスイーツでエネルギー補給をしないようにしなければなりません。理解はできますが、お母さまの身体にとって何の得にもなりません。
スクランブルエッグとほうれん草や鶏肉炒めと玄米など、素早く食べられて栄養のある食事をとりましょう。おかゆはオート麦や水溶性食物繊維からゆっくりとエネルギーを放出するため朝食に向いています。夜中に授乳している場合はエネルギーを補充する必要があります。
いつでもすぐに食べられるように、カットした果物や野菜を冷蔵庫に入れておいたり、袋入りの無塩ナッツをマザーズバッグに入れておきましょう。どちらも授乳中に片手でみかんの皮をむくよりも簡単です!
母乳育児によってお母さまは喉が渇くことがありますので、水分摂取を十分にすることは大切です。誰でも一日にコップ6~8杯の水分摂取を目指すべきですが、授乳中はさらに多く取るようにしたいです6。基本的に授乳中は、コップ1杯の水、ミルク、または甘味料不使用のフルーツジュースを少しずつ飲んでください。
お母さまが食べたり飲んだりする他のものと同様に、カフェインも母乳に届くため、授乳中は摂取を制限したほうが良いでしょう。カフェイン制限に関する公式な推奨内容は国ごとに大きく異なりますが、ほとんどの国では一日あたり200~300mg(0.007~0.01オンス)以上のカフェインを摂取しないよう勧めています(300mgはマグカップ2杯のドリップコーヒーまたはマグカップ4杯の紅茶に相当します)。何がご自身に合っているかは担当の病院スタッフ関係者にご相談ください。カフェインはコーラやエナジードリンクにも含まれており、プレーンチョコレートの小さなバーには最大50mg(0.002オンス)含まれている場合があることを覚えておいてください7。
母乳育児中のお母さま方の多くはアルコール摂取をやめます。しかし、授乳期間中に時々軽く飲むことが赤ちゃんに悪影響を与えるとは示されていません8 。アルコールは赤ちゃんが3か月を過ぎるまでは控えた方が良いですが、その後は少量(125mlまたは4.2液量オンス)のグラスワイン程度をたまのごちそうとして楽しむことはかまいません。
アルコールを飲む場合は、アルコールが全身をめぐるのにかかる時間として、次の授乳の前に少なくとも数時間は考慮しておきます9 。その代わり、実際に赤ちゃんに授乳している間に少量飲むこともできます。赤ちゃんが飲み終わる時まではアルコールがお母さまの体内にあるからです。もしくは完全に安心できるように、アルコールを飲む予定をしている場合は、さく乳して母乳を保存し、次の授乳の時に赤ちゃんにあげることもできます。
アルコールは一時的に母乳量を減らす可能性があることを心に留めてください8 。そのため飲酒をすると、赤ちゃんはおなかをすかせて、もっと飲みたがるようになるかもしれません。
母乳はお母さまが食べた物の風味を運びます10。そのため、お母さまが様々な授乳期向けの食事を楽しみ、赤ちゃんに様々な味を体験させることにより、赤ちゃんはその後の将来においてこうした風味を好きになるでしょう。
お母さまが辛い料理を好きな場合、授乳中にこれらを控える理由もありません。1人目の子どもの時、私は辛い食べ物をたくさん食べました。私は娘が2歳の時にスリランカに連れて行きました。これは偶然かもしれませんが、娘は何でも食べるようになりました。
幼い赤ちゃんが頻繁にぐずったり、ガスがたまっていたりすると、お母さまは何か食べたものが原因ではないかと当然疑問に思います。おそらくそうではありません。研究では、母乳に含まれるものに対してアレルギーがある乳児の割合はわずか1%強であるということが示唆されています11 。お母さま方が反応を引き起こすのではと心配することがある辛い食べ物、チリソース、またはアブラナ科の野菜よりも、お母さま方の食事に含まれる牛乳、卵、トウモロコシ、または大豆タンパクが最も一般的なアレルギーの犯人です。
赤ちゃんが母乳に含まれるものに対してアレルギーがある場合、過度な嘔吐、発疹、血便、持続性のうっ血を引き起こすこともあります。赤ちゃんに食物不耐症がある場合、多くのお母さまは、授乳の後にぐずるまたは泣く、食物の逆流、吹き出すような下痢、または膝を胸まで持ち上げるなどの姿勢に気づくでしょう。何かおかしいと感じた場合は医療従事者の助言を求めてください。数週間特定の食べ物を除去した後に再度与えて、赤ちゃんに変化があるかどうか見るようにアドバイスを受けるかもしれません。
食べ物日記をつけてもよいでしょう。お母さまが食べたり飲んだりしたものすべてと赤ちゃんの症状を書き留めておくと、パターンが見えてくるかもしれません。その食品が提供する栄養素を他の栄養源から確保する必要があるため、ある食品群(乳製品など)を除去する前に必ず医療従事者にアドバイスを求めてください。お住まいの地域によっては、栄養士またはその他の専門家に紹介されるかもしれません。
十分なカロリーとお母さまの身体に必要な栄養(炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラル)をすべて摂取している限りは大丈夫です。授乳中にベジタリアンやビーガンの食事をしているお母さま方は、十分な量のビタミンB12、ビタミンD、カルシウム、オメガ3脂肪酸を必ず摂取する必要がありますので、こうしたビタミン栄養素を補い続けることができる食べ物やサプリメントを選んでください。
お母さまがベジタリアン、ビーガン、マクロビオティック、またはその他の特殊な食事をしている場合は、お母さまと赤ちゃんに必要なすべての栄養素を摂取していることを確認するために、担当の医療従事者に伝え助言をもらうとよいでしょう。
1 National Health Service (NHS) [Internet]. Burnley, UK: Department of Health; 2018. Should pregnant and breastfeeding women avoid some types of fish?; 2015 Jul 06 [cited 2018 Apr 12]; Available from: https://www.nhs.uk/chq/Pages/should-pregnant-and-breastfeeding-women-avoid-some-types-of-fish.aspx
2 Oberhelman SS et al. Maternal vitamin D supplementation to improve the vitamin D status of breast-fed infants: a randomized controlled trial. Mayo Clin Proc. 2013;88(12):1378–1387.
3 Thomas M, Weisman SM. Calcium supplementation during pregnancy and lactation: effects on the mother and the fetus. Am J Obstet Gynecol. 2006;194(4):937-945.
4 Pitt et al. Reduced risk of peanut sensitization following exposure through breast-feeding and early peanut introduction. J Allergy Clin Immunol. 2018;141(2):620-625.e1
5 Dewey KG. Energy and protein requirements during lactation. Annu Rev Nutr. 1997 Jul;17(1):19-36.
6 Food Standards Agency (FSA) [Internet]. London, UK:Crown copyright 2002. Eating for breastfeeding; [cited 2018 Apr 13]; Available from: https://www.food.gov.uk/sites/default/files/multimedia/pdfs/board/life02breastfeeding1109.pdf
7 National Health Service (NHS) [Internet]. Burnley, UK: Department of Health; 2018. Breastfeeding and diet; 2016 Jan 29 [cited 2018 Apr 12]; Available from: https://www.nhs.uk/conditions/pregnancy-and-baby/breastfeeding-diet
8 Haastrup MB et al. Alcohol and breastfeeding. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2014;114(2):168-173.
9 HealthyChildren.org [Internet]. Itasca, IL, USA: American Academy of Pediatrics;2017. Alcohol & Breastmilk; 2015 Nov 21 [cited 2018 Apr 13]. Available from: https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/baby/breastfeeding/Pages/Alcohol-Breast-Milk.aspx
10 Mennella JA et al. Prenatal and postnatal flavor learning by human infants. Pediatrics. 2001;107(6):e88.
11 Academy of Breastfeeding Medicine. ABM clinical protocol# 24: allergic proctocolitis in the exclusively breastfed infant. Breastfeed Med. 2011;6(6).
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