授乳のヒント
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母乳の量がいつ落ち着くかご存知ですか? または赤ちゃんが大きくなり活発になるにしたがって、赤ちゃんの授乳頻度や時間がどのように変化するかご存知ですか? 1か月目以降の授乳について、このガイドをご覧ください。
おめでとうございます!母乳育児の最初の大変な1か月をやり遂げました。母乳は完全に成乳となり1、母乳量も落ち着き始め、母乳が漏れ出すことも少なくなってきていると思います。でも、心配なさらないでください。母乳量が減ったわけではありません。おっぱいがより効率的に母乳を作り、溜めておけるようになってきただけです2。6週間目には、初めて歯ぐきをのぞかせる素晴らしい笑顔を見られるようになり、2か月目までには、授乳を500~600回経験することになります。おそらくラッチオン(くわえかた)の問題は解決しており、今は授乳を維持してその便利さと持続的な健康面でのメリットを実感するときです。
1~6か月の赤ちゃんにとって「標準的な」授乳の範囲は広く、 24時間に4回しか飲まない赤ちゃんもいれば、1日に13回おっぱいを飲む赤ちゃんもいます3。
「月齢が1か月前後になったら、赤ちゃんは1回の授乳で飲む量を増やし始め、授乳間隔も長くなります。」と国際的に著名なラクテーション・コンサルタントであるCathy Garbinは説明します。「以前よりも多くのおっぱいを飲めるように赤ちゃんの胃袋が成長しており、さらにお母さまの成乳が赤ちゃんをより長い時間、より満腹にさせ続けます。」
授乳時間は12分から1時間近く続き、赤ちゃんによって本当に大きく異なります3。赤ちゃんが体重を増やし、この範囲内に収まる授乳パターンを持っているのであれば、心配する必要は何もありません。
しかし驚くべきことに、赤ちゃんが飲む頻度に関わらず、月齢1か月ごろと、そろそろ離乳食をスタートする6か月頃では、ほぼ同じ量の母乳を1日に消費しています4。
「そうは言っても、 赤ちゃんが多く欲しがったりあまり欲しがらなかったりする日が、特に赤ちゃんの気分が良くないときは必ずありますが、お母さまはそれに従うほかありません。」とCathyは言います
はい。母乳は、赤ちゃんが人生の最初の6か月に必要とする全てのものを与えることができます。完全母乳の場合は、水すら必要ないのです5。事実、赤ちゃんの消化器系は6か月前後になるまで固形食に対処することができません。また、1歳になるまで牛乳を飲むこともできません。
この時期に直接授乳していると、さらに赤ちゃんの未来にはわくわくするような出来事が用意されていきます。授乳は赤ちゃんの口の筋肉を鍛え、あごの発達と歯並びをサポートします6, 7。これらはすべて食べることと話すことにおいて重要なことです。そして、母乳の味はお母さまが食べたり飲んだりしたものに影響されるため、固形食を始める前であっても赤ちゃんが新しい味を体験できるということも意味します8。
それだけではなく、赤ちゃんが病気になると、感染症の撃退を手伝うためにお母さまの身体は母乳中に分泌される抗体を作るようになります9。これは、赤ちゃんが今後数か月にわたって成長し、ますます活動的になっても、赤ちゃんを守り続けるということを意味します。
お母さまが本調子になると、授乳を続けることは驚くほど楽になります。イギリスの2児の母、Claudiaは次のように明かします。「たくさんの哺乳びんを消毒したり、粉ミルクを作ったり、持ち歩いたり、温めたりする必要がないため、特に赤ちゃんが少し大きくなってもっと外に出るようになると、母乳育児は楽な選択肢になります。」
一晩中起きていることは、すべての赤ちゃんにとって普通のことです。1~6か月の赤ちゃんの多くは、1日あたりの母乳摂取量の5分の1を一晩で消費するため、夜間の授乳は赤ちゃんが十分なカロリーを摂取するために重要なことです3。
「実のところ、一晩中寝ているとは何を指すのかによります。」とCathyは言います。「赤ちゃんが夜中の12時に就寝し、午前5時に起きた場合、これを一晩中寝ていたと言う方もいます。たしかに、2時間ごとに起きるよりもずっといいことですから。6週目から夜7時に就寝し、午前7時に起きる授乳期の赤ちゃんも実際にいますが、その他の多くの赤ちゃんはいまだに頻繁に目を覚まします。赤ちゃんは一人ひとり違います。」
700人以上の赤ちゃんを対象にしたウェールズの研究では、6か月から12か月の間に80パーセント近くが夜中に少なくとも1回は起きており、25パーセントが3回以上起きていました。母乳育児の赤ちゃんと粉ミルクの赤ちゃんに頻度の差は見られませんでした10。
ですから、いずれにせよ起きることになるのであれば、少なくとも母乳を直接与えることは楽な選択肢なのです。オーストラリアの2児の母、Minetteは、次のように同意します。「夜はほとんど起きる必要はありません。自分の身体と赤ちゃんが自動的に授乳を行ってくれます。予定をたてたり、量を測ったり、消毒することはありません。もうすべて準備できていて、おっぱいの中で適切な温度になっています。私にはぴったりです。」
4か月前後は、大人のように、深い眠りと浅い眠りを繰り返し始めるため、赤ちゃんの睡眠パターンが変化する場合があります。結果として、以前よりも頻繁に夜中に目を覚ますようになります。「この4か月の段階では、授乳の問題ではなくて睡眠の問題に向き合うことになります。」とCathyは言います。お母さまは少し疲れるかもしれませんが、この流れに乗って、乗り越えようとしてみてください。」
これを「生後4か月の睡眠退行」と呼ぶ人も言いますが、「進行」という言葉の方が適しています。後戻りしているように感じるかもしれませんが、赤ちゃんは大切な成長段階に向かっているところです。赤ちゃんはすばやく学習し、世間をより認識するようになり、より良い奥行き知覚を身につけ、おそらく分離不安を体験し始めています。目覚めたときにお母さまを求めて泣き、授乳時やそれ以外のときもお母さまのそばにいることは、安心感を求める方法なのです11–13。
赤ちゃんを長時間寝かせるために、粉ミルクで「満腹」にさせたり、少し早めに固形食を始めたりしようとしないでください。母乳には眠気を引き起こし、お母さまと赤ちゃんをリラックスさせるホルモンが含まれています。また、研究では、母乳を直接与えている母親の方が、粉ミルクや粉ミルクと母乳を混合している母親よりも、実際に睡眠時間が長いことが示されています14。
歯は4か月以降に生えてくることが多いです。赤ちゃんはイライラさせる歯茎の痛みがあると、ぐずっておっぱいを嫌がるようになり、不快感で泣きます。
しかし、授乳は痛みをやわらげるものでもあります。ある研究では、予防接種中に授乳した赤ちゃんの方があまり泣かず、痛みから早く回復したということが分かっています15。この鎮静効果は赤ちゃんに歯が生え始めたときも役に立ちます。
できれば避けたいこととして、赤ちゃんが新しい歯を試すためにおっぱいを使うことがあります。「ちょっと面白がって、お母さまをふざけて噛む赤ちゃんもいます。噛まれそうになったら、授乳中の赤ちゃんの微妙な変化に気づくと思います。赤ちゃんは噛む前に邪魔にならないように舌をどける必要があります」とCathyは言います。「これは通常大きな問題にはならず、起きる可能性も数回の授乳のみです。授乳をやめて、噛んではいけないことを優しく伝えてください。赤ちゃんはすぐに理解します。」
授乳を始めてから6か月以内でまだ完全母乳をしている時期に、赤ちゃんと数時間離れたり、または職場復帰や1~2日の外出でさらに長時間、赤ちゃんのそばを離れなければならない状況があるかもしれません。
この時点で母乳育児を諦めなければならないとは思わないでください。赤ちゃんには母乳のメリットを、お母さまがそこにいなくても飲ませることができる、さく乳によって与え続けることができます。Cathyも次のように説明します。
「事前に数日間、少量(1回に約40~60 ml)をさく乳してください。そうすることで、他の人が赤ちゃんに母乳を与えるためにストックを用意することができます。少量ずつさく乳することで、母乳量には影響を及ぼしません。
「職場に復帰する場合は、きちんと計画を立てるために雇用者と相談してください。多くの方は夜間と、一日の最初と最後の授乳を直接授乳します。そして、お昼の休憩時間にさく乳して、不快感を和らげて翌日のための母乳を用意します。
「通常、人々が考えているよりもずっと簡単で、最近では多くの職場に設備が整っています」と彼女は付け加えます。「さく乳器は効率的で、この複雑な行為を楽にやりきることができます。」
アメリカの2児の母、Natalieは、自分のルーティーンについて次のように説明します。「私は母乳が出続けるように、そしてつながりを維持するために、赤ちゃんが起きるとすぐに授乳し、仕事に行く前にもう一度あげることもあります。職場では翌日のために2回さく乳し(仕事中は子どもに哺乳びん2本分の母乳が飲めるようににします)、夕方の授乳のために急いで帰宅します。週末はさく乳はせずに、直接授乳するだけの生活に戻ります。」
6か月前後に、赤ちゃんが食べ物に興味を示し、ひとりで座るようになったら、固形食を始める準備は整っています。ただし、これで母乳育児を終えなければならないということではありません。Cathyも次のように説明します。妊娠中に築き上げられた赤ちゃんの鉄分の蓄えは、6か月までに使い切ってしまうため、赤ちゃんはもっと手に入れる必要が生じます」と彼女は言います。
「この時期に食べ物を与え始めてください。ただし、赤ちゃんが8~9か月になるまでは、依然として授乳のほうがカロリー源、栄養源としては重要であることを忘れないでください。赤ちゃんはこの時点でもっと多くの食べ物を食べるようになりますが、お母さまはまだ1日に4~5回(赤ちゃんによります)は授乳をするかもしれません。12か月になる頃までには、1日に2~6回の間で授乳する可能性があります。すべての赤ちゃんは一人ひとり違いますので、母乳から必要なカロリーの半分を摂取している赤ちゃんもいます。」
また、赤ちゃんが慣れ親しんだ味を食事中に味わえるよう、穀物やピューレなどの最初の固形食にくわえて、母乳をあげることもできることを覚えておいてください。可能であれば、さく乳した新鮮な母乳(冷凍保存していないもの)を使って、食事を与える前に混ぜてください。そうすることで、生きている成分や栄養素を壊さずにすみます16。
6か月でやめるべきという世間からのプレッシャーを感じるかもしれませんが、授乳やさく乳を長く続けるほど、お母さまと赤ちゃんへのメリットも多くなります。
「世界保健機関(WHO)は、幼児が2歳になってからも固形食と共に母乳を与えることを推奨しています。なぜなら、母乳は免疫系をサポートする重要な役割を担っているからです」とCathyは言います。「赤ちゃんが不安になったり具合が悪くなったりしたときに、心理的に赤ちゃんをサポートできる大切な手段でもあります。」
8か月のときは1日に4回授乳するかもしれませんが、1歳を過ぎると1日2回程度に減ります。アメリカの2児の母、Janeのように、お母さまと赤ちゃんに都合がよく、ライフスタイルに合ったパターンを見つけることができます。Janeは子どもたちが2歳前後になるまで授乳していました。「夕方と週末、子どもたちが私のそばにいたがるときに授乳していました。」と彼女は言います。「子どもたちの具合が悪くなったときもとても助かりました。元気づける定番の方法です。」
「息子は成長してわんぱくになっても、よくおっぱいを飲むために私のところへ戻ってきました。まるで息子にエネルギーを充電しているようでした。」と、カナダの2児の母、Amyは思い出して言います。「途中で障害にでくわしたり、傷ついたりしたとき、授乳にとても慰められていました。」
よちよち歩きの赤ちゃんに授乳していると、「そんなことをするから子どもがおっぱいをやめたがらなくなる。」という人がいるかもしれません。しかし、選択の自由が与えられていれば、幼児は多くの場合、2歳から4歳の間に自分で卒乳します17。
「長く授乳を続けるつもりは全くありませんが、いまでも4歳の子と22か月の子に授乳しています。」とイギリスの2児の母、Susannahは言います。「下の子には仕事に行く前と仕事から帰ってきた後に授乳し、仕事中にさく乳しています。上の子にはベッドに入る前、または動揺しているときに安心させるための授乳を少しします。これは、もう一度つながるための素晴らしい方法です。疲れきったり、傷ついたときは、素晴らしい健康面でのメリットと子どもたちに与えている安心感を思い返します。いまは乳児主導の卒乳という方法にしたがって、子どもたちの準備ができたときにやめようと考えています。」
その他に想定されることや、たくさんのサポートとアドバイスについては、1か月目以降の授乳の課題をご覧ください。
1 Ballard O, Morrow AL. Human milk composition: nutrients and bioactive factors. Pediatr Clin North Am. 2013;60(1):49-74.
2 Kent JC et al. Principles for maintaining or increasing breast milk production. J Obstet, Gynecol, & Neonatal Nurs. 2012;41(1):114-21.
3 Kent JC et al. Volume and frequency of breastfeedings and fat content of breast milk throughout the day. Pediatrics. 2006;117(3):e387-395.
4 Kent JC et al. Longitudinal changes in breastfeeding patterns from 1 to 6 months of lactation. Breast Med. 2013;8(4):401-407.
5 Almroth S, Bidinger PD. No need for water supplementation for exclusively breast-fed infants under hot and arid conditions. Trans R Soc Trop Med Hyg. 1990;84(4):602-604.
6 Victora CG et al. Breastfeeding in the 21st century: epidemiology, mechanisms, and lifelong effect. Lancet. 2016;387(10017):475-490.
7 Peres KG et al. Effect of breastfeeding on malocclusions: a systematic review and meta‐analysis. Acta Paediatr. 2015;104(S467):54-61.
8 Mennella JA, Beauchamp GK. Maternal diet alters the sensory qualities of human milk and the nursling's behavior. Pediatrics. 1991;88(4):737-744.
9 Hassiotou F et al. Maternal and infant infections stimulate a rapid leukocyte response in breastmilk. Clin Transl immunology. 2013;2(4).
10 Brown A, Harries V. Infant sleep and night feeding patterns during later infancy: Association with breastfeeding frequency, daytime complementary food intake, and infant weight. Breast Med. 2015;10(5):246-252.
11 Infant sleep information source. [Internet]. Normal Infant Sleep Development; December 2017 [cited 2018 Feb]
12 Baby sleep science. [Internet]. The-Four-Month-Sleep-Regression-What-is-it-and-What-can-be-Done-About-it. March 2014 [cited 2018 Feb]
13 The Myth Of Baby Sleep Regressions – What’s Really Happening To Your Baby’s Sleep? [Internet]. Pinky Mckay; December 2017 [cited 2018 Feb]
14 Kendall-Tackett K et al. The effect of feeding method on sleep duration, maternal well-being, and postpartum depression. Clinical Lactation. 2011;2(2):22-26.
15) Harrison D et al. Breastfeeding for procedural pain in infants beyond the neonatal period. Cochrane Database Syst Rev. 2014;10.
16 Czank C et al. Retention of the immunological proteins of pasteurized human milk in relation to pasteurizer design and practice. Pediatr Res. 2009;66(4):374.
17 Weaning from the breast. (2004). Paediatr Child Health, 9(4):249–253.
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